地球環境や地域、経済活動もサステナビリティを真剣に意識し、取り組んでいかなければならない「大転換」の時代のなか、ソーシャルビジネスという新しい価値観、仕組みをつくっていくことが大切だと思います。ソーシャルビジネス事業者を支援するために、資金循環を促す政策上の仕組みや人材育成などの整備が必要だと思います。

★PC140004②.jpg当初、"ソーシャルビジネス"という単語を耳にしたとき、"ソーシャル"と"ビジネス"という相容れない性質のものを組み合わせた語義矛盾だと思いました。ビジネス(business)とは「忙しいこと」であり、「Time is money」、すなわち短期で収益をあげる、時間が利子を生むを表すような言葉です。一方、ソーシャルは市場原理ではなく相互扶助や互酬である寄附や社会貢献などの意味合いが強い言葉です。しかし、ソーシャルビジネスは、環境や福祉など社会的な課題をビジネスの手法で解決するという、一見相容れない概念を融合した一つの概念であり、"ソーシャル"と"ビジネス"のバランスをとるというのではなく、一つの概念のもとで新しい価値観、仕組みをつくっていくことが大切なのだと思います。

地球環境や地域、経済活動もサステナビリティを真剣に意識し、取り組んでいかなければならない「大転換(カール・ポランニー)」の時代のなか、ソーシャルビジネスは、経済問題と社会問題を同時に解決する重要な役割を果たすものだと言えます。元来、企業はサステナビリティを意識して経営活動を行うのが当然であるのに、一部の企業はそれを忘れ、短期的な利益を追い求めてきました。それが現在の金融危機・経済危機を招いたと思います。右肩上がりの成長神話が崩壊した今、ソーシャルビジネスへの期待感、存在感が立証されたのではないでしょうか。

日本ソーシャルビジネス宣言でも謳われているように、ソーシャルビジネスは多様な価値観を創出し、経済問題と社会問題を同時に解決する切り札として、現在の雇用情勢悪化の中で雇用の受け皿となりうること、地域の自立策となりうること、などが期待されていると思います。

ソーシャルビジネス事業者を支援するためには、資金循環の円滑化が重要ですが、金融機関の立場から言えば、ソーシャルビジネスという事業自体にもサステナビリティが大切です。当初は補助金でもよいですが、中長期的には短期的な支援に頼らず事業が収益をあげて続いていく必要があります。ビジネスとして持続性があるならば、投融資の対象ともなります。民間銀行がソーシャルビジネス事業者の理念に共感して資金を提供し、そのことで銀行も評価される、米国の地域再投資法のような政策上の仕組みや、人材育成など、事業者を支援するためのテクニカルアシスタンスの整備が必要だと思います。

前田 正尚氏

株式会社日本政策投資銀行設備投資研究所地球温暖化研究センター主任研究員

サステナビリティの概念を行内に取り入れ、UNEP金融機関声明署名や環境格付け融資を進めるなど、環境配慮型金融の促進に取り組んでいる。著書・論文に「草原を維持する」(宇沢弘文共編著『都市のルネッサンスを求めて』東大出版会)、「融資と社会環境問題」(金融機関の環境戦略研究会『金融機関の環境戦略』きんざい)等。