社会企業家が行うコミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスは、市民の幸せを向上させるものです。米国発の金融危機から未曾有の世界経済危機に向かう様相を見せる中、コミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスによる革新はこれからの社会発展のあり方に関して有力なパラダイムになる期待を持っています。

P3040061②.JPGのサムネール画像コミュニティ・ビジネスに関心を持つようになった直接のきっかけは、2002年に北海道庁内で行われた政策研究においてコミュニティ・ビジネスによる地域振興を取り上げ、その報告書をまとめたことでした。地域へのこだわりを持ち、地域社会への貢献をビジネスとして行っている、全国各地の実践事例を調べていく過程で、官依存の経済構造が強い北海道でも市民が中心になってコミュニティ・ビジネスを行うことで、地域社会へブレイク・スルーを起こしたり、地域社会の活性化の原動力になったりすると確信しました。特に人口が減少する過疎地においてコミュニティ・ビジネスが地域社会の維持と発展へ大きな貢献をし得る可能性を持つことから、経済政策だけでなく地域政策としても取り組むべきであると報告書では結論づけています。

その後、北海道のコミュニティ・ビジネスによる地域振興の政策づくりに関わる一方、日本初となる貸金業のNPO、特定非営利活動法人北海道NPOバンクの設立、経営に関わり、その確信が強まりました。また、北海道内各地でワークショップを通じてコミュニティ・ビジネスの創出の支援を行い、コミュニティ・ビジネスの事業者とのネットワークも形成しています。反面、コミュニティ・ビジネスを振興、支援していく側から見て、コミュニティ・ビジネスの経営の厳しさも実感しています。地域社会への貢献という志を持ちながら、その半ばでコミュニティ・ビジネスを止めざるを得ない社会企業家たちの声を聞き、社会の中にどのような支援体制や仕組みを作ったら良いか、模索しています。

P3040060①.JPGのサムネール画像経済学者のシュンペーターは、企業家の創出する革新が経済成長をもたらすと指摘しています。社会企業家が行うコミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスは、そのビジネスの内容により町内会程度の狭い地域社会からグローバルな社会といった広い範囲で革新を起こし、経済成長というよりは市民の幸せを向上させるものです。それが資本主義に基づく「会社」を中心とした通常のビジネスによる革新と、コミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスによる革新のもたらす社会的成果の大きな相違だと思います。米国発の金融危機から未曾有の世界経済危機に向かう様相を見せる中、コミュニティ・ビジネスやソーシャル・ビジネスによる革新はこれからの社会発展のあり方に関して有力なパラダイムになる期待を持っています。

河西 邦人氏

北海道コミュニティビジネス・ソーシャルビジネス協議会会長(札幌学院大学商学部教授)

1960年東京生まれ。青山学院大学大学院経営学研究科博士後期課程単位取得退学。外資系金融機関のアナリストを経て、現在、札幌学院大学商学部教授兼大学院地域社会マネジメント研究科教授。地方自治体の各種委員を務める一方で、北海道コミュニティビジネス・ソーシャルビジネス推進協議会座長、北海道NPOバンク理事を通じた社会貢献活動にも従事している。