社会的な問題が21世紀型になっていったのと同時に、解決の仕方も21世紀型が求められるようになってきました。日本国内でのソーシャルビジネスのこれからの展開を考える上では、海外の手法も学び、積極的に国内の課題解決に転用することも大切です。また、「ソーシャルビジネス」という枠組みで築かれるセクターを越えたパートナーシップをどのように進めていくか、共に考えていきたいと思います。

私はもともと、今日NPO・NGOや市民活動と言われている、国内では地域レベルでの活性化、市民の暮らしに密着した活動の現場と実践的研究の場を往復しながら関わってきましたので、その流れでコミュニティビジネスや社会的企業、そしてソーシャルビジネスに出会いました。具体的には、環境や福祉、まちづくり、教育などテーマは多岐に渡ります。

中村先生①.jpg1980年代半ば頃からだったでしょうか、地域の現場を見る中で、今日につながるような芽を発見しました。当時は市民事業という言い方をしていましたが、ワーカーズコレクティブなども出始めていましたし、個別に色々な現れ方、色々なテーマで行われていたものが、NPOのこの10年くらいの時代を経て、次につながる形として出てきたものの一つがソーシャルビジネスではないかと思っています。こういう動きは、示し合わせたわけでもないのに同時多発的に世界でも起こっているもので、今、欧米や、アジアでもソーシャルビジネスや社会的企業という言い方で言い表される動きが起こってきています。

従来、政府や行政、民間企業がそれぞれのやり方で社会的な課題を解決したり、商品やサービスを提供したりしてきたのですが、それぞれの単独の形ではできなくなってきています。福祉国家がうまく機能しなくなったということなどはその典型例かもしれません。セクターを越えた形で人々をつないだり、そこに新しい事業を起こしていく人たちの存在が必要になり、また、クローズアップされるようになってきました。そういう人たちがノーベル平和賞を受賞したり、世界的に評価をされる時代になってきました。

その背景には、それに見合った問題も発生しているということで、私はそれを21世紀型の社会的問題や21世紀型の貧困という言い方をしていますが、問題が21世紀型になっていったのと同時に、解決の仕方も21世紀型になっていかなければならなくなってきました。そのいくつかある有効な処方箋の一つがソーシャルビジネスという手法だろうと思います。ビジネスの手法をもって社会的課題を解決するのですが、社会的な課題というものが、例えば貧困問題一つを考えてみても、古典的な貧困ではなく、日本のような先進的と言われる社会にも、「格差」や「ワーキングプア」に象徴されるような新しい形の貧困が顕在化しています。そうやって見てみると、その解決の仕方については、既にそういう問題がいち早く顕れてきた欧米や、新しいタイプと古典的タイプが同時に進行している途上国での取り組みが、日本のこれからのソーシャルビジネスでは非常に参考になると思っています。
ソーシャルビジネスが解決する課題というのは、一見従来の課題のように見えて、その解決の手法と担い手の新しい組み合わせや新しい事業手法がそこにないとうまくいかないと思います。

PB220020②.jpg今後は、国内でのソーシャルビジネスのこれからの展開を考える上でもグローバルなつながりや情報を活かして、海外で行われている事業のあり方をたんに輸入するのではなく、海外の手法を学んで、それを日本の国内の現実的な課題解決に合った形で転用することが大切だと思います。また、今回のこのソーシャルビジネス全国フォーラムや主催者であるソーシャルビジネス推進イニシアティブのように、ソーシャルビジネスという具体的な動きの中でのセクターを越えたパートナーシップは初めてだと思いますので、その進め方を一緒に考えて行くことが大切だと思います。

ソーシャルビジネスは、日本のNPO・NGOにとっては次なるステップやステージに進むとき大いに役立つものだと思います。NPOやNGOが活動する際に、活動の資源があまりに乏しい現状のなかで、資源を調達したり、自分たちで創り出していくとき、ソーシャルビジネスという手法は、自分たちの活動のサスティナビリティを確保していくために大いに参考になると思います。まだまだ、クリアすべき課題は多いですが、まずは動きを実践としてスタートさせることが大きいと思います。

中村 陽一氏

立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科教授

1957年生まれ。一橋大学社会学部卒業。編集者、日本生協連、非営利ネットワーク型シンクタンク代表、東京大学客員助教授、都留文科大学教授等を経て現職。日本ボランティア学会副代表、日本NPO学会発起人・前理事。市民活動・事業の現場と往復し実践的研究、基盤整備、政策提言に取り組む。『日本のNPO/2000』『NPO!? なんのため だれのため』『多元的共生を求めて』他共編著書多数。