貧富の差や環境破壊、ジェンダーや人口問題など、世界にある10の格差は、世界にとって脅威となる一方で、ビジネスチャンスでもあります。社会的課題を解決する、サステナブルな事業に取り組むと地球のためにもなり、ビジネスにもなります。日本企業はグローバルな視野を持ち、社会企業家とネットワークやパートナーシップを築くことが必要です。そのためにも、社会起業家の存在そのものを知ることができる、出会いの場づくりが必要だと思います。

★PA260030原田勝広様①.jpg90年代、ニューヨークで国連担当をしており、社会的課題に日本も積極的に取り組むことが必要であると考えていた時分に、ソーシャルビジネスを唱えていた人たちと出会ったことがソーシャルビジネスとの最初の出会いです。その後、社会的企業として社会的課題を解決することに共感するようになっていきました。

社会的課題を解決することについては、NPO・NGOが注目され、実際に活動をしてきましたが、寄付文化のない日本では活動を展開していくことが困難です。一方で、企業のCSRにも注目が集まり、企業自身の社会的責任に対する意識が向上しています。そういう背景の下、マネジメントに力点を置く事業型NPOや社会のために働く会社が生まれてくるなど、非営利のNPOと営利の企業の境界はあいまいになってきているという潮流があります。その中で企業とNPOのパートナーシップの動きもあるが、1つの組織として社会的課題をビジネス手法で解決する、新しい形の組織が出てきています。それは、社会によいことをやりながら利益を生み出す、持続可能なソーシャルビジネスを行う事業体です。

日本でもメディアが着目するようになり、2006年グラミンバンク創設者ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞してから、最近でもBRACアベッド氏やアショカ財団日本人初のグローバルフェローである栃迫氏が来日した際には会場が大盛況となるなど、ソーシャルビジネスへの関心の高まりが見受けられます。大学でも慶應義塾大学や東京工業大学などでは、ソーシャルビジネス関連の授業が増えており、今後ますます重要になってくるだろうと思っています。

世界の課題は沢山ありますが、『クレイジーパワー』の著者、ジョン・エルキントン、パメラ・ハーティガンによると、世界には貧富の差、環境破壊、ジェンダーや人口問題など十大格差がある。これは世界にとって脅威となるものです。戦争と同じように、それらの課題が解決されないと地球に未来はないという脅威である一方で、見方を変えるとビジネスチャンスでもあるという。つまり、そこには一つの市場が現れるということで、ソーシャルビジネスが生まれるチャンスでもあるというわけです。なるほどと思いました。社会的課題を解決する、サステナブルな事業に取り組むと地球のためにもなり、ビジネスにもなるんですよ。

★PA260046原田勝広様②.jpg日本企業には、国内の狭い市場だけでなく、グローバルな視野を持たないと日本経済自体が危ういということを認識してもらいたいですね。企業がソーシャルビジネスの存在を知り、社会企業家とネットワークやパートナーシップをいかに築けるかということが課題だと思います。日本の企業は元来、いいモノ・いいサービスを創り出して社会に貢献し、利益を生み出す事業体であったはずですが、今は、大きくなりすぎて目的を履き違えている側面があります。企業の原点に立ち返るために、社会的企業家が生み出す価値観に触れることで、企業の原点に改めて気づくことが大事だと思います。企業が社会的企業の存在を知り、パートナーシップを組んだりネットワークをつくったりすることで、社会はどう変わっていけるのか知りたいと思っています。そのためにも、ソーシャルビジネスの中間支援策としては、社会的企業家の存在そのものを知ることができる、出会いの場づくりをしていただきたいです。ただ集まるだけの場ではなく、企業の決定権限を持つ人と、社会的企業家が出会える場づくりが必要だと感じます。

原田 勝広氏

日本経済新聞社編集委員

上智大外国語学部卒業後、日本経済新聞社入社。主に国際畑を歩み、サンパウロ、ニューヨーク両特派員のあと現職。国連、市民社会、NGO、NPO、CSR、社会起業家などを幅広く担当。日本新聞協会賞受賞。著書は「こころざしは国境を越えてーNGOが日本を変える」、「CSR優良企業への挑戦」(日本経済新聞社、2006年)など多数。